物事集 令和三年三月版
大江戸釣客伝 「令和三年三月二日」
『大江戸釣客伝 上、下夢枕 獏著 講談社文庫 4刷、3刷 2013年6月 各¥676+税』(購入計¥220税込み)
久しぶりに、読んだ本を記録しておこうと思った。
ここ暫くは、色々読んでいても、それらの記録はして来なかったのだが、この本には、感服させられたので、忘れないようにしたい。
...普通、日本史や小説の中では、個別に登場する人達が、ここでは"同時代の人々"として、中には顔を合わせても居たそうで、大変興味深い!
「何羨録」を記した「津軽采女」(津軽藩藩主)、俳人の「宝井其角(「松尾芭蕉」の門人)」、画人の「英一蝶(元"蝶湖")」、大商人の「紀伊国屋文左衛門」、副将軍の「徳川光圀」、そして悪名高い「徳川綱吉」(犬公方)。
悪法にまでなってしまった「生類憐みの令」は、やはり、「将軍綱吉」の"妄想染みた感性"からのものだったようだ。
此の「津軽采女」の義父が、「吉良上野介義央」だそうだが、彼は有名な「忠臣蔵」の敵役にされてしまった人物だ。
世に言われた、"忠臣蔵"は、一般大衆が生み出した"忠義という妄想"であったらしい。
実は、非の殆どは、(京都)朝廷からの使者の"お迎え役"だった「浅野内匠頭」の方にあって、(その指導・差配役の「吉良上野介」への実費用の前払いを勝手に値切ったとか、自分勝手な解釈で"式服"を着て来たとか)色々あったらしいが、"世間"はそんな内幕はどうでもよくて、「吉良上野介」を、只管、悪者に仕立てて、彼への"仇討ち"だけを面白がっていただけらしい。
それを、この著者は、(一種の被害者である)「津軽采女」の眼を通して、そうした"世間"へも、批判の眼を向けている。
"参考資料"が「あとがき」に挙げられていたのには、感心した!(図2[クリック])
小説では、こうした記載は少ないのが普通だが、著者の真面目さが良く分かるので、良い!
更に、この著者の本を探してみたくなった。(尤も、「陰陽師」などは、既に読み終えては居る)